作編曲家であると同時に、アカイEWIの開発に携わった経験を持つウィンド・シンセ・プレイヤーの第一人者、住友紀人。2020年にNuRADが誕生して以来、この最先端ウィンド・コントローラーを存分に使いこなし、なおかつ“まだまだ可能性を秘めたコントローラー”と言う住友に、独自の活用法やカスタマイズ・ポイントについて話を聞いた。このインタビューから浮き彫りとなる、NuRADの真のポテンシャルをぜひとも感じ取ってほしい。
● インタビュー・文 布施雄一郎
● 撮影 土居政則
● 取材協力 島村楽器 新宿PePe店
※サックス・ワールドVol.29( 2023/06発売)より転載
※ 取材当時のアーティスト使用機材はNuRAD R2の導入前のためR1にて紹介しています。NuRAD R2はNuRAD R1から機能と機構が改善されており、一部スペックが異なります。
NuRADなら、 パソコン1台あれば 多種多様な音色を鳴らせる
⚫ NuRADを2年愛用されてきて、改めて今、どのような印象をお持ちですか?
住友:今、僕が使っている機材の中では最先端の機材ですから、一番可能性を感じますし、まだまだ良くなる余地があると思っています。“良くなる”というのは、NuRADに対してプレイヤー側が発想力を広げていったり、身体が順応していくことも含めてのこと。サックスだって、音程によって吹きにくい運指がありますよね。そのために技術を磨くのと同じように、NuRADも繊細な表現ができたり、有機的な要素がたくさんあるので、奏者がそこに対応していくことはとても大事です。そういう意味では、電源を入れるだけでだれでもすぐに吹けるカジュアルなウィンド・シンセとは違う、ハイエンドなコントローラーですから。
⚫ 善し悪しではなく、そもそもカテゴリーが違うんですね。
住友:現在主流のカジュアルなモデルとは、原付バイクとF1マシンくらい違いがあるので、ある程度の研究や勉強は必要となります。それに、サックスやフルートといった管楽器ともまったく別物。ですから、サックスを吹ける人がNuRADで同じように吹けるかと聞かれれば、答えは“NO”です。NuRADなりの方法論を身につける必要があって、そこはプロ/アマ問わず、こういうハイエンドなモデルを手にしようという人たちは必ず知っておかなければいけないポイントです。ただその分、プレイヤーを刺激してくれるNuRADにしかない魅力がたくさんありますし、プレイヤーが“こんな表現をしたい”と思ったことに応えてくれる許容力と表現力を持つコントローラーだと言えます。
⚫ 住友さんはアカイEWIを長年演奏されていますが、EWIとの違いを挙げると?
住友:“音色の豊富さ”が一番の違いですね。僕が最も愛着を持っているEWIは、EWI3020ですが、EWI3030m(専用音源)以外の音色を鳴らすには、サンプラーや他のシンセを買わねばならず、お金も必要だし、システムも大がかりになってしまいます。手間も、あと機材スペースも必要でした。でもNuRADなら、パソコン1台あれば多種多様な音色を鳴らせます。そこが、内蔵音源を持たないがゆえの強味ですね。
写真① 運指がしやすいように、あるいは間違って指が触れてしまわないようにキィの長さや角度を細かく調整。また右手の指が動かしやすいようにハンド・レストの一部をカットし、本体からマウスピースまでのプレートを短くしている。目を惹くペイントは、ギターにデザインを施しているデザイナーによるフリー・ハンドによるライティングだ。
写真② 基本的にピッチ・ベンド・コントローラーを使用しないという住友は、同コントローラー部分にテープを張り、指が触れてもハード的にピッチ・ベンドが動作しないように工夫している。
自分の身体(奏法)をNuRADに アジャストさせている
⚫ 音源はどのようなものをお使いですか?
住友:ホーン・セクションなどはネイティブ・インストゥルメンツのソフト・サンプラーKONTAKTの内蔵音源「SESSION HORNS PRO」がとても気に入っています。例えば、トランペットとトロンボーン、テナー・サックス、バリトン・サックスというように自由にホーン・セクションを組めて、しかも自動的に各楽器の音域内で音が鳴ってくれるので、とても自然なんです。これと、イタリアの「SUONOPRO」という、研究チームのようなところが開発したウィンド・シンセ専用の音源も愛用しています。モデリングのトランペットやフルートといった音色のほかに、ハーモニカやインドの管楽器バンスリなどもあり、それら音源はすべてウィンド・シンセで鳴らす前提で作り込まれているので、NuRADですごくコントロールしやすいんです。ただ、イタリアの研究チームと直接やり取りをして購入する必要があるので、入手はそれなりに大変でした。他に、アナログ・シンセ系の音はローランドZENOLOGY。これらをDAWソフトのアップルMainStageに立ち上げて、NuRADで鳴らすシステムを組んでいます。
⚫ ネイザン・イースト(b)のライブでNuRADを演奏する際も、本体とパソコンのみでプレイされているそうですね。
住友:最小限、最軽量のシステムで、どこにでも演奏に行ける手軽さもいいですね。モジュール音源のEWI3030mを持って海外へライブをしに行っていたころは大変でしたから(笑)。しかもNuRADなら、音色面で何か我慢することもなく、むしろ多彩なバリエーションの音色が演奏できる。この点は、NuRADの圧倒的勝利だと思っています。
⚫ 設定面はいかがですか?
住友:EWI3020にはなくて、こちらにあるという点ではベロシティ・カーブの設定ですね。しかも本体にLEDディスプレイが付いているので、グラフィックでカーブを確認できる点は画期的だと思いました。今は、吹き始めの反応が重めな「-4」にしています。ただ、アナログ・シンセ系の音色にはちょうどいいんですが、ホーン・セクションなど生楽器系の音色で、fp(フォルテピアノ)的な吹き方(吹き始めは強く、すぐに落として徐々にまた上げていく奏法)をすると、音量を下げたときに音が途切れてしまうことがあるので、そうならないように自分の奏法でカバーしています。ですから、本体はどの音色でも対応できるブレス・カーブに設定しておいて、自分の身体(奏法)をNuRADに寄せていくようにしているんです。
⚫ それだけセンシティブで、吹き甲斐のあるウィンド・コントローラーなんですね。
住友:ウィンド・シンセ歴数十年の僕が、いまだに自分の身体をNuRADにアジャストさせようとしている理由は、そこに“ゴール”がないからなんですね。楽器って、どんなに簡単だと言われるものでも探みを追求すれば難しい。ならば、最初から気に入った楽器を買って、大切にしながら頑張って練習するのもいいと思います。そういう意味でも、将来的な可能性を大いに秘めたウィンド・コントローラー最高峰モデルとして、いきなりNuRADから始めるのも十分にアリです。“難しそう”と怖がらずに、ぜひ多くのプレイヤーにトライしてもらいたいですね。

画面① パソコンはアップルのMacBook Airで、アプリは同社のMainStage(右画像)を使用。音源は、ネイティブ・インストゥルメンツのKONTAKTやローランドZENOLOGY、SUONOPRO(https://www.suonopuro.net/)を愛用している。オーディオ・インターフェイスはネイティブ・インストゥルメンツのKOMPLETE AUDIO6。
Profile 住友紀人[すみとも のりひと]
1964年生まれ、バークリー音楽大学卒。マイケル・ブレッカーと共にEWIのサウンド・アドバイザーとして開発に携わり、その第一人者として名を広める。数々の著名なミュージシャンたちと共演を経て、作曲家としては映画「ホワイトアウト」、「沈まぬ太陽」で日本アカデミー優秀音楽賞を受賞。2009年アレンジ、サウンドプロデュースで参加した、いきものがかり「ハジマリノウタ」で日本レコード大賞最優秀アルバム賞を受賞。2014年よりNATHAN EAST Band of Brothersに参加。サックスとキーボードを担当。
『ドラゴンボール超 オリジナルサウンドトラック』
2016年 住友紀人

NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体バック・パネルに装着されている5 PIN DIN 端子からMIDI出力するのと同時に、NuRADからは同じ端子から常時CVアナログ信号も出力。別売のCV-Board for EuroRack、もしくはCVXG-Board for EuroRackのに接続すると、モジュール内でCV信号を取り出してアナログCV出力変換(ミニプラグ)し、外部のアナログ・シンセサイザーなどの音源との接続が可能に。
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意 (カラーによって有償オプションの場合があります)。
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/













