シンセサイザーやエフェクターを駆使したサウンド・メイク術を熟知し、多彩なウインド・シンセサイザー/サックス・プレイを行うことで知られる管楽器奏者、河原塚ユウジ。自身のYouTubeチャンネルでもNuRAD解説動画をたびたびアップするなど、同ウインド・コントローラーを細部まで知り尽くしたNuRADユーザーの一人だ。そんな河原塚氏に、NuRADの演奏性や特色、新世代ウインド・コントローラーの可能性についてたっぷりと語ってもらった。
● インタビュー・文 布施 雄一郎 ● 撮影 富田一也 ● 取材協力 島村楽器 新宿PePe店
● Presented by コウスキミュージックアンドサウンド
※サックス・ワールドVol.28( 2023/03発売)より転載
※ 取材当時のアーティスト使用機材はNuRAD R2の導入前のためR1にて紹介しています。NuRAD R2はNuRAD R1から機能と機構が改善されており、一部スペックが異なります。
吹き比べてみるとNuRADの方が気持ちよく感じた
⚫ 河原塚さんは高校時代からウインド・シンセをお使いになっていたそうですね。
河原塚:高校時代はバンド・ブームで、先輩がやっていたYMOのコピー・バンドでシンセに興味を持ったんです。僕は幼いころからトランペットをやっていたので、吹く楽器でシンセ的なことをやりたくて、アカイEWI3020を買ってT-SQUAREのコピーをやっていました。そして大学時代にマイケル・ブレッカーの音楽に出会い、海外のEWI事情を初めて知るわけです。そこから、仕事でサックスをメインに、EWIも時々吹いていたんですが、数年前に自分の中で再び“マイケル・ブレッカー熱”が再燃して。僕の師匠である小池 修さんもEWIをプレイしていたので、アドバイスをもらいながら、T-SQUAREとはまた違う路線でウインド・シンセを追求したいと考えていた、そんなタイミングでNuRADが発売されるという情報を知り、購入しました。
⚫ EWIを長く演奏していた河原塚さんにとってNuRADの演奏感はいかがでしたか?
河原塚:EWI5000も外部音源のコントロール性には長けているので、同じ音源をEWI5000とNuRADとで吹き比べてみたんです。すると、NuRADの方が気持ちよく感じたんですね。おそらく、マウスピースの大きさや息が抜けない構造、気圧式のビブラート・センサーといったあたりが要因だと思います。EWIはマウスピースの中にある金属板を噛むことでビブラートをかけるので、噛む位置で若干かかり方が変わるんです。それがNuRADはセンサーに送られる気圧でビブラートがかかるので、噛む位置に左右されないんです。
⚫ より意図した通りのニュアンスでビブラートをかけられるわけですね。
河原塚:ビブラートは管楽器の“命”ですから、まずそこが非常にコントロールしやすいと感じました。もうひとつ、マウスピースを噛む力をパッと緩めて息を抜くと、EWIもNuRADも、ほんの少しだけピッチが下がるように作られているんです。その感覚が、NuRADはとても自然だったんです。
⚫ そもそも、なぜピッチが下がるような仕様になっているのですか?
河原塚:サックスなどの管楽器は、フレーズの終わりで少しだけピッチを下げると、聴覚的に、フレーズ全体のピッチ感がよい印象になるんです。そこがNuRADは、すごく表現しやすくて。演奏時のピッチって、高音にいけば少し上ずるし、低音だとちょっとぶら下がり気味になる傾向があります。そういう不安定な要素があっても、フレーズの最後にちょっとだけピッチを下げて音を切ることで、フレーズのピッチがよい印象を与えられるんです。逆に言えば、本来ウインド・シンセはだれが吹いても正確なピッチで鳴らせるはずなんですが、フレーズの最後をぶつ切りで終わらせると、少し音痴に聴こえてしまうんですね。だから上級者に比べて、初心者の演奏は拙く感じてしまう。ビブラートで音を揺らしながら、最後にほんの少しフワッとピッチを下げるように吹いてあげることで上手く聴こえる。そこがNuRADの気圧センサーは、非常に表現しやすいと感じます。
写真① ブラック(左)が標準モデル、レッド(右)が河原塚のカスタマイズ・モデル。本体とマウスピースの間を短くし、口と手が自然な距離感となるように調整。また音階用のキィを少し長くし、演奏しやすくしている。
写真② 本田雅人と同様に、オクターブローラーはEWIから移植。河原塚はソロ演奏時に2~3オクターブ・アップでよく使うため、その音域を親指で操作しやすくなるように、ローラーの取り付け位置を微調整している。
5〜6種類の音源を切り替えながら演奏している
⚫ 一方で、両手を同じ高さで構える演奏スタイルはいかがでしたか?
河原塚:サックスもフルートもそうですけど、管楽器は物理的に順番に穴が空いていないといけませんが、電子楽器はその必要がないわけです。しかも、これによってどちらかの肩が凝るようなこともない。むしろ人間工学的にはこの方が絶対にいいと言えます。ただ、両手の位置が楽器の中心軸から外れるため、指でキーを強く押すと本体が左右に揺れてしまうので、軽く指で触れるように吹くようにするなど、ある程度の慣れは必要になってくるでしょうね。
⚫ 各種設定に関してはいかがですか? 例えば、ブレス・カーブの設定は?
河原塚:標準(リニア)です。理由は、僕は5~6種類の音源を切り替えながら演奏していて、ブレスに対する反応は音源ごとに異なるんです。なので、本体側は標準設定で、音源側でブレス・カーブを調整しているんです。そのために僕はアップルMainStage(音楽アプリケーション)を使っています。MainStageをホストに、その中でいろんなソフト音源を立ち上げることで、例えばNuRAD側の出力設定を変えることなく、MainStage側で音源が必要とするMIDI信号(CCナンバー)を設定したり、小節ごとに和音を組んだりといったことをしています。有料ソフトですけどMacユーザーにはとてもオススメです。Windowsユーザーでしたら、エイブルトンLiveなどでも同じことができますよ。
⚫ そういったアプリケーションを活用することで、ただメロディーを吹くだけの演奏から、一歩も二歩も踏み込んで、音楽表現の可能性を大きく広げられるんですね。
河原塚:いろんなタイプのソフト音源を駆使したり、マイケル・ブレッカーのようなパフォーマンスに挑戦できることこそ、NuRADならではの魅力だと思うんです。そのためには、もちろんシンセの音作りやMIDIの勉強も必要ですが、せっかくNuRADを買うのなら、絶対にそこに挑戦した方が面白いです。僕のYouTubeチャンネルでそうしたノウハウを紹介しているので、ぜひ参考にしていただいて、たくさんの方がNuRADで新しい扉を開いてもらえたら、とても嬉しいですね。
画面① 河原塚が数か月前に導入したという強力なソフト・シンセ、ベンジェンス・サウンドVPS Avenger。このポテンシャルをNuRADでフル活用するために、音楽アプリケーションMainStageの機能性やコントロール性が重要となる。

画面② 初代EWIの専用ハードウェア音源EWV2000を忠実に再現したソフト・シンセTWV2000。「TRUTH」「OMENS OF LOVE」といった、ウインドシンセ・ファンに馴染みの深いT-SQUAREの“あの音”がすぐに鳴らせる音源だ(開発中)。

画面③ 右は河原塚が愛用するハードウェア・シンセ、デイブ・スミス・インストゥルメントEvolver。アナログ音源ならではの音の反応の素早さが気に入っているという。左は、現在使いこなし方を研究中だというローランドMC-101。

画面④ 右はニューラル・ディーエスピーのマルチ・エフェクターQuad Cortex。MacBookとUSB接続し、ソフト音源の音にエフェクトをかけるために使用。右は音色を切り替えるためのMIDIフットコントローラー、モーニングスターFXのMC6。
Profile 河原塚ユウジ[かわはらづか・ゆうじ]
小学生よりトランペットを始め、中学、高校では吹奏楽部に所属、様々な楽器に触れ学生指揮者も務める。中学終わりころからロックバンドに興味を持ちドラム、ギターなどを始める。高校入学後“イース”を結成し、EWIとヴォーカルを担当。大学進学後サックスに転向、ジャズ・サックスを習い始める。2006年に“4D”、“Apple Jam”、“SAX MACHINEGUNS”を結成。現在は“STKJAZZ”を主体として各地にて定期的なライブを行う。サックスの教則本の執筆を多数手掛けている。
i:s (イース ) 4thアルバム 『4 Colors』 2021年

NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体バック・パネルに装着されている5 PIN DIN 端子からMIDI出力するのと同時に、NuRADからは同じ端子から常時CVアナログ信号も出力。別売のCV-Board for EuroRack、もしくはCVXG-Board for EuroRackのに接続すると、モジュール内でCV信号を取り出してアナログCV出力変換(ミニプラグ)し、外部のアナログ・シンセサイザーなどの音源との接続が可能に。
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意 (カラーによって有償オプションの場合があります)。
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/










