ジャズを中心に、ポップス、フュージョン、クラシックなど、ジャンルにとらわれない幅広い演奏が魅力のスウェーデン出身サックス奏者、ビョーン・アルコ。現在は日本・札幌市を拠点にヨーロッパやアメリカなど世界中で活躍し、サックスのみならず、NuRADプレイヤーとしても知名度を上げている。そんな彼独自のライブ・システムや活用アイデア、そして今以上にこれから深掘りしていきたいと言うNuRADの可能性について、じっくりと話を聞いた。
● インタビュー・文 布施雄一郎
● 撮影 富田一也
● 取材協力 メディア・インテグレーション LUSH HUB
※サックス・ワールドVol.31( 2023/12発売)より転載
※ 取材当時のアーティスト使用機材はNuRAD R2の導入前のためR1にて紹介しています。NuRAD R2はNuRAD R1から機能と機構が改善されており、一部スペックが異なります。
慣れるまで少し時間を有したが、 今となっては NuRADの方が演奏しやすい
●アルコさんがウインド・シンセに興味を持ったのはいつころですか?
アルコ:高校時代にマイケル・ブレッカーやボブ・ミンツァー、T-SQUAREを聴くようになり、音楽大学(スウェーデン王立音楽アカデミー)の1〜2年生のときにドイツからアカイEWI 4000Sを取り寄せて購入しました。僕はサックスの生音が一番好きなので、EWIは、例えばギターだとか、サックスとは別の楽器として使いたいと思ったんです。あと、スウェーデンには“Hawk on Flight”という伝説のフュージョン・バンドがあって、そのサックス奏者、オーヴェ・イングマールソンさんも1980年代からずっとEWIを吹いていたので、それもウインド・シンセに興味を持つきっかけでした。そのイングマールソンさん、今は新潟在住なんですよ。そして僕は、今年の10月に新メンバーとして、そのバンドに加入したんです。
●とても不思議な縁ですね。一方でNuRADを使いはじめたきっかけは?
アルコ:ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ(※1)のサックス奏者が知り合いで、僕が札幌に引っ越したタイミングでNuRADを教えてくれたんです。NuRADを作っているベルグランド・インストゥルメンツはスウェーデンのメーカーなので、すぐに欲しいと思ってベルグランドさんにメールをしたら2カ月待ちだという返事で。でも日本では限定モデルが売っていたので、楽天市場のネット通販で購入しました(笑)。
●実際にNuRADを手にしたときの第一印象は?
アルコ:EWIと違う部分は慣れるまでに少し時間がかかりました。まずタンギング。EWIでは、サックスと同じように舌をマウスピースにタッチさせて吹いていたんですが、NuRADは構造的にそれができないので、フルートのように“タタタッ”と吹けるようになるまで2カ月ほどかかりました。あと、オクターブ・ローラーもEWIより小さくて違和感がありましたが、頑張って練習しているうちに、むしろサイズがちょうどいいと感じるようになりました。
●自分自身がNuRADにアジャストしていったわけですね。
アルコ:はい。今となっては、僕にとってはNuRADの方が演奏しやすいですね。ディスプレイでいろいろな設定を視覚的に確認できる点もいいですし、実際にライブで使うと、日本でも海外でもお客さんが必ず興味を持ってくれて、“これは何?”とステージ前に集まってくるんです。先日も“Subfive”というフュージョン・バンドで沖縄ツアーをやったとき、今鳴っているフレーズは、ギターなのかシンセなのか、それともNuRADなのかと、みなさんすごく興味を持ってくれました。


写真① 限定ピンク・カラーが鮮やかな本体は、現状は購入時そのままのセッティングで使用。今後、ベンド・プレートの取り付けなど手を加えていきたいと言う。ネック・ストラップは使わず、ハンド・レストでプレイしている。

写真② ライブでのシステムは、NuRADとiPad、DI(RADIAL USB PRO)をUSBハブ経由で接続し、PAへ出力。以前はパソコンを使っていたが、iPadに変えてからMIDIエラーが少なくなったと言う。ツアー時も持ち運びがしやすく、バックグラウンドで音源アプリを動かしつつ楽譜を画面表示するなどiPadをフル活用している。
ホーン・セクションに NuRADを入れてみて 新たな可能性を追求したい
●それらのサウンドはiPadで作り出しているそうですが、本体の設定は?
アルコ:僕は指を速く動かして細かいフレーズを吹きたいので、デグリッチ機能(※2)はできるだけ低くして、素早い反応で音が鳴ってくれるようにブレス・カーブを調整しています。ただ、ベロシティ・ディレイはオリジナル設定の20msecだし、初期セッティングから大きくは変えていません。そうした設定面もそうですし、本体のカスタマイズや、CVアウトを使ってアナログ・シンセも鳴らしてみたりと、これからもっといろいろなことを試したいですね。演奏面でも、これはスウェーデン時代にやっていたんですが、トランペットやトロンボーンのホーン・セクションにNuRADを入れてみたいと思っていて。音色は違うけど、フレージングは木管楽器的ですから、ホーンとのブレンドがとても面白くなる。そういった可能性をまだまだ秘めたウインド・コントローラーなので、僕自身、今後をとても楽しみに感じています。

画面① 3つの音源アプリのサウンドをiPad内でミックスし、出力するためにAudiobusを使用。各音源のバランスやオン/オフを簡単かつスピーディにコントロールできるDTM用アプリだ。


画面②③ 音源アプリは、コルグiMono/Poly(上)とiM1 for iPad(下)、そしてブラムボスMozaic Plugin Workshop をレイヤーさせ音作りを行っている。和音は演奏時の操作ミスを避けるため、NuRAD本体のポリ・モードではなく、音源側で和音が鳴るように設定している。
Profile Björn Arkö [ビョーン・アルコ]
スウェーデン伝統の地、ダーラナ県出身のテナー・サックス奏者。ヨーロッパ最古の音楽学校である王立ソードラ・ラテン音楽学校(高校)からスウェーデン王立音楽アカデミーへ進学し、同校大学院修士課程を卒業。大学在学中より才能を見出され、プロのサックス奏者として活動を開始し、2017年にはBjörn Arkö groupの名でファースト・アルバムの『Stating the Obvious』をリリース。教育分野においても定評があり、大学卒業後からは多数の音楽高校や音楽大学などからのワークショップの依頼を受け教育に携わっていたが、2021年にはスウェーデン王立音楽アカデミーの客員講師にも就任し、サックスやジャズ総論などの教育を行っている。スウェーデンの国民的ポップス歌手のリサ・ニルソンのツアーやテレビ出演に参加、Dirty Loopsなどと共演し、世界的ベーシストであるヘンリック・リンダーとのロサンゼルスでの公演、Ulf Wakeniusとの共演の他、自身の編曲でオーケストラとの共演も行っている。2021年に日本へ移住し、移住後はEXILEや清木場俊介、松田聖子などのサポートメンバーとしても活動。2023年に母国の伝説的フュージョン・バンド“Hawk on Flight”の新メンバーとなり、ツアーに参加。2024年には、ビリー・コブハムのツアー・メンバーに抜擢された。2025年春から、東京とストックホルムの2拠点で活動。ジャズを中心に、ポップス、フュージョン、クラシックなど、ジャンルにとらわれない幅広い演奏が魅力のサックス奏者である。
『Stating the obvious』 2018年 ビョーン・アルコ

NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体バック・パネルに装着されている5 PIN DIN 端子からMIDI出力するのと同時に、NuRADからは同じ端子から常時CVアナログ信号も出力。別売のCV-Board for EuroRack、もしくはCVXG-Board for EuroRackのに接続すると、モジュール内でCV信号を取り出してアナログCV出力変換(ミニプラグ)し、外部のアナログ・シンセサイザーなどの音源との接続が可能に。
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意 (カラーによって有償オプションの場合があります)。
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/










