先進的ウインド・コントローラーNuRADを日本でいち早くプレイしたサックス奏者、本田雅人。前号では、彼のこだわりが反映された“本田カスタム・モデル”の詳細を紹介したが、本号では、長年に渡り数々のウインドシンセ&コントローラーを吹き続けてきた本田がNuRADのどのような点に魅力を感じ、アドバンテージと考えているのか、じっくりと話を聞いた。
● インタビュー・文 布施雄一郎
● 撮影 富田一也
● 取材協力 トート音楽院
※サックス・ワールドVol.33( 2024/6発売)より転載
※ 取材当時のアーティスト使用機材はNuRAD R2の導入前のためR1にて紹介しています。NuRAD R2はNuRAD R1から機能と機構が改善されており、一部スペックが異なります。
NuRADなら キーボードでは不可能な吹奏楽器ならではの演奏が可能
● 本田さんのファースト・ウインドシンセ(コントローラー)はヤマハWX7だったそうですね。
本田 そうです。T-SQUAREに入る前、僕は梶原順(g)、石川雅春(ds)とWITNESSというユニットをやっていて、1枚アルバムを作ったんです。そのときに、自分が作った曲でウインドシンセを使いたくて。多分、先にWX7を買っていて、それでウインドシンセの曲を書いたように思います。WX7はサックス的な専用マウスピースとプラスチック製のリードがあって、口でピッチをコントロールする仕組みでした。リリコンもそうで、今のエアロフォン(ローランド)もそのタイプ。対して、NuRADやアカイEWIはリードがなく、吹けばど真ん中のピッチで演奏できます。そこがサックス奏者からすると、最初は違和感を覚えるところだと思うんです。僕もそうでした。でも、意外とNuRAD/EWIタイプの方がいいんですよ。
● サックスと違う方がいいのですか?
本田 なぜかと言うと、デジタル楽器で、サックスのように口を緩めたり締めたりしてピッチを調整するのはすごく難しいんです。アナログなサックスのマウスピースをコントロールするのとはまったく勝手が違って、結果的に、ピッチ感の悪いシンセのように聴こえてしまうんです。その点、NuRAD/EWIタイプは正確なピッチで鳴らせて、それが棒吹きとならないように、バイト・センサーを1回噛むことでピッチが1回上下に動くんです。それを繰り返すことでピッチを細かく揺らせるわけですが、これがとても自然で、ちゃんとしたビブラートの表現につながります。NuRADはそれができるという点が、プレイヤー的にとても大きいことなんです。
● ピッチをコントロールする感覚がサックスとは全く違うのに、結果として、サックス的な演奏表現ができるというのは、とても面白いですね。
本田 アナログに寄り添おうとするほど、寄り添えなかった部分がかえって露呈してしまう。その点、NuRADはあえて寄り添おうとせず、まったく違うアプローチで演奏表現を広げていて、僕はそこがとても気に入っています。いわゆる“しゃくり”やベンド・ダウンも、サックスでは感覚的に行う奏法ですが、これもマウスピース型のウインドシンセだと、口でやろうとしてもサックスのようには上手くいかないんです。例えば僕らだと、サックスで上の“ミ”を吹いたとき、そのまま下の“ラ”あたりまで4〜5度のベンド幅で下げられますが、ウインドシンセのマウスピースで下げられるのはせいぜい半音くらい。幅が狭いんです。でもNuRADなら、右手の親指でピッチ・ベンド・ダウンを操作すれば1音ほど下げられて、もっと下げたければ左手の親指でオクターブ・ローラーを使えば1オクターブ以上を上下させての表現が可能です。中でもオクターブ・ローラーはとても重要です。
● どういう点で重要なのですか?
本田 サックスだと1個のオクターブ・キィで下の“ラ”からフラジオを入れて3オクターブ程度の音域がカバーできて、この音域を鳴らせれば十分に“頑張ってる感”が出せます。でもウインドシンセだと少々高い音を吹いても“頑張ってる感”は出なくて、そのためには8オクターブくらいの幅が必要なんです。それを実現するには、ボタン操作ではとても対応できないんです。僕的にはオクターブ・ローラーの一択です。ただ、こうした操作はサックスにはないものですから、その差に最初は戸惑うと思います。僕もそうでした。でも慣れればすぐにこっちの方が断然いいと感じるはずです。
● そこはサックスとは別の楽器と考えて、プレイヤーが順応していけばいい、と。
本田 別の楽器ではあるんですけど、サックス奏者にとっては、結果的にNuRADはより吹きやすいウインド・コントローラーだと感じるはずです。しかも、例えば70の息で吹いたときにどんな音色が鳴らせて、そこから100にするとフィルターがどう動くのか、そうした加減の細かさも、ウインド・コントローラーとしてのNuRADの大きな特徴だと思います。
● NuRADは、管楽器奏者が普段、直感的に行っている演奏表現を、同じように音に反映してくれるコントローラーなんですね。
本田 そこがNuRADの大きな魅力ですし、キーボードでは不可能な、吹奏楽器ならではの演奏だと思っています。さらにもうひとつ、NuRADのコンパクトさも僕にとって大きな魅力です。その利点を損ねないように、僕はあえてソフト音源アプリ「IFW」をiPad mini 6に入れて使っているんです。NuRAD本体は一般的なスーツケースに入るので、このシステムならいろんなところに持って行けて、地方のライブでも演奏する機会が増えました。そうなると、やっぱりデザインにもこだわりたくなって、現在に至るわけです。
● なるほど。前号で紹介した新しいカラーリングも、そうした経緯でカスタマイズされたものだったんですね。
本田 はい(笑)。そうやってライブで演奏したり、YouTubeやSNSで使われる機会が増えれば、お客さんも目に触れる機会が増えて、きっと興味を持ってくれるでしょうし、一般的な認知度がさらに高まると思うんです。そうやってウインドシンセのシーンがさらに広がって、NuRADも改善・改良を重ねて、よりよいコントローラーに進化していくことを僕は願っています。
Profile 本田雅人 [ほんだ・まさと]
音楽教員の両親の影響で幼少から音楽に興味を持ち、小学三年生でサックスを始める。国立音楽大在学中よりプロ活動を開始。1991年にT-SQUAREに加入すると、バンドのフロントを務めると共に、作曲、アレンジの面でも新風を巻き起こす。1998年にT-SQUAREを離れたのち、多くのアーティストのレコーディングやアレンジ、プロデュースなどで多方面に渡って精力的に活動している。また、現在は昭和音楽大学の客員教授として後進の指導に当たる。

NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体バック・パネルに装着されている5 PIN DIN 端子からMIDI出力するのと同時に、NuRADからは同じ端子から常時CVアナログ信号も出力。別売のCV-Board for EuroRack、もしくはCVXG-Board for EuroRackのに接続すると、モジュール内でCV信号を取り出してアナログCV出力変換(ミニプラグ)し、外部のアナログ・シンセサイザーなどの音源との接続が可能に。
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意 (カラーによって有償オプションの場合があります)。
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/









