SNS音楽界を牽引するサックス奏者、musa&千野哲太によるプロジェクト“Cyber Sound Wave”。共にクラシック・サックス奏者でありつつ、NuRADでしか表現し得ない音楽をクリエイトし続ける2人が、今回、本誌のためにドビュッシー「月の光」をNuRADデュオでレコーディング(※)。その制作秘話をはじめ、Cyber Sound Wave結成のきっかけからNuRADの魅力まで、数々のエピソードを2人に披露してもらった。
※「月の光」の音源はサックス・ワールドVol.35付属CDに収録
● インタビュー・文 布施雄一郎
● 撮影 富田一也
● 取材協力 トート音楽院
※サックス・ワールドVol.35( 2024/9発売)より転載
※ 取材当時のアーティスト使用機材はNuRAD R2の導入前のためR1にて紹介しています。NuRAD R2はNuRAD R1から機能と機構が改善されており、一部スペックが異なります。
NuRADの表現の幅が広いからこそ、 サックスに近いニュアンスが出せる
⃝Cyber Sound Wave結成のきっかけは?
千野 2人は大学も年齢も違うんですが、クラシック・サックス専攻という繋がりで、お互いの存在は知っていました。そこから大学を卒業して、2人もライブ配信を始めて。僕はアカイEWIを買って、ウインド・シンセをもっとやっていきたいと思っていたんですが、周りにやっている人がいなかったんです。そのころ、musaさんはローランドのエアロフォンを配信で吹いていて、話をしてみたら意気投合したんです。
musa 私は今、TikTokライブをメインにしていますが、配信自体はもっと前からいろんなプラットフォームでやっていて。ただ、自宅ではサックスを吹けなかったんです。でも演奏をして自分のことを知ってもらいたいと思っていたときに、ウインド・シンセなら自宅でも演奏できると知ったんです。それが2年くらい前で、エアロフォンを吹くようになってウインド・シンセの魅力を広めたいと思うようになって、その流れで千野さんとCyber Sound Waveをスタートさせました。
⃝NuRADを使い始めたのはいつごろですか?
musa 千野さんの楽器がいつの間にかNuRADに変わってたんです(笑)。その後に、千野さんがTikTokライブで演奏しているのを聴いて、サックスに近いニュアンスやすごく表現力があって、“何? この楽器!?”と思って。
千野 感度の高いプレイヤーなら必ずNuRADに興味を持つだろうから、わざわざ直接は勧めなかったんです(笑)。それでも結局、Cyber Sound Waveの最初のライブで、僕がもう大半の曲をNuRADで吹いて、2回目のライブで2人ともNuRADになっていました(笑)。
musa 千野さんのプレイは、やっぱりサックスに通じる部分があって、NuRADを演奏していても、一緒にサックスを吹いているような感覚になります。それもNuRADの表現の幅が広いからこそ、サックスに近いニュアンスが出せるのだと思います。
千野 musaさんは僕と逆に、サックスではやらないような演奏をNuRADでやっているという印象です。僕はバラードのような曲こそNuRADの魅力を出せると思っていますが、musaさんはハツラツとした元気な曲をNuRADで吹くことが多くて、サックスのときにはあまり出さないような天真爛漫な表現を(笑)NuRADでやっているように感じます。
NuRADならクラシック的な表現が できるということを聴き取ってほしい
⃝そんな2人で、今回、ドビュッシー「月の光」をNuRADでレコーディングしていただきました。この曲を選んだ理由は?
musa まず、広く知られている曲にした方が、NuRADの表現力が伝えられるのではないかと思い、NuRADで魅せられる曲を考えて、「月の光」に決めました。
千野 「月の光」はドビュッシーの代表曲と言われていますが、当時のドビュッシーは、本当はもっと土臭い曲を書きたかったと思っていて。でも、世の中に広く受け入れてもらうためにこの曲を書いたというのが僕の解釈で、NuRADをもっと広く知ってもらうために、まさにぴったりな曲だと思ったんです。だからアレンジも基本的には原曲のまま。ただ単純にピアノ(原曲)の右手と左手でパート分けするのではなく、同じところでハモったりしているので、そういうところを聴いてもらえると、NuRADの魅力を感じ取ってもらえるかなと思っています。
⃝音色面では何か工夫を?
千野 使った音源は、僕がローランドSH-4d、musaさんはソフト音源IFWで、2人が普段に使っている音色です。例えばサックスのアンサンブルでも、お互いに音色を寄せようとしつつ、それでも生まれる違いに演奏者の個性が出てくる。NuRADも同じで、例え近い音色を使っても、吹く人が違えば自然と違いが出るんです。「月の光」ではmusaさんの方が少しだけ輪郭がはっきりとした音に聴こえると思います。ちなみにメロディーは僕が演奏していますが、意図的に音色を差別化するようなことはしません。意図的に音色を差別化するようなことはしませんでした。
musa NuRADは吹き方で音のニュアンスが変わりますし、息の入れ方で音色も変化するので、サックスと同じように一人一人の音色があると思っていて、そこもNuRADの大きな魅力だと感じています。
⃝Cyber Sound WaveによるNuRADデュオ「月の光」を聴いてくれる読者にメッセージをお願いします。
musa ウインド・シンセって、だれかに勧められたり、興味を持つきっかけがないとなかなか触れる機会がないと思うんです。でも、サックスに個体差があるように、ウインド・シンセもモデルによっていろんな特徴がありますし、特にNuRADは実際に吹いてみると初めて気が付くことも多くて。何もゲームみたいな電子音がするわけではなく(笑)、意外とサックスに近い感覚に驚くと思います。“サックスと別物だから”と触れることなく終わってしまうのはもったいないので、ぜひ一度、手に取って吹いてみてもらいたいです。クラシック・サックスを勉強している方には、私たちの「月の光」を聴いて、NuRADならクラシック的な表現ができるんだというところを聴き取っていただけたら、とても嬉しいです。
千野 そのうえで、NuRADは新しい楽器ですから、新しい奏法が可能で、そのイメージを逆にサックスにもっていくことでサックスの表現力も広げられます。例えば今回の「月の光」もそうですが、原曲のピアノは発音時が一番音が大きくて、そこから必ず音は減衰します。管楽器は後から音を膨らましていけるけど、音量ゼロから奇麗に吹くのは現実的に難しい。でもNuRADならそういう表現もできるので、NuRAD版「月の光」を聴いて新しいニュアンスを感じてもらえたら、そのイメージをサックスに取り入れてもらえると、きっと演奏表現を広げられるはず。それって、すごく面白いことなので、サックスを吹き続けよう考えている人にも、ぜひNuRADをオススメしたいです。
【千野哲太 使用機材】


“NuRADはピアニシモでの表現力が素晴らしく、サックス以上のダイナミクスを表現できる”と語る千野。本体は基本的にノーマル仕様で、USBケーブル止めと息抜き機能のみを追加搭載。ただし実際には息抜き量は閉じ気味にして、シンセ側でフィルターが開きにくくなるような設定にしている。車好きの千野らしく、ボディ・カラーは車体塗装と近いシルバーにカスタマイズ。

NuRADはテクニックを披露するだけでなく、バラードに適していると感じ、出音重視で現在はローランドのSH-4dをメイン音源として使用。多彩な音色を切り替えて使うというより、“自分のNuRADはこの音で、吹き方によってこれだけのニュアンスを表現できる”という点を追求しているそうで、ライブで使う音色も3つ程度だそうだ。

YouTube動画を作成するためにPCに録音したり、ライブ配信を行う際にはユニバーサルオーディオapollo x4(オーディオインターフェース)を使用。コンパクトで高音質のためデスクトップでも使いやすいモデルだ。
【musa 使用機材】


カラーは好きな色だというパープルをチョイス。息抜き機能とUSBケーブル止めのみを追加搭載している以外はノーマル仕様だ。当初、不慣れなオクターブ・ローラーの操作には苦労したそうだが、NuRAD購入を決めて以降、本体が届くまでの期間にEWIを使い、オクターブ・ローラーの操作を練習したのだそうだ。

musaが使用する音源は、ウインド・シンセに特化して開発されたソフト・シンセ“IFW(Instrument For Wind Controller)”。気に入った音色を使い、奏法によってニュアンスを変化させるという演奏スタイルだ。

NuRADはテクニックを披露するだけでなく、バラードに適していると感じ、出音重視で現在はローランドのSH-4dをメイン音源として使用。多彩な音色を切り替えて使うというより、“自分のNuRADはこの音で、吹き方によってこれだけのニュアンスを表現できる”という点を追求しているそうで、ライブで使う音色も3つ程度だそうだ。
Profile 千野哲太 [ちの・てった]
第16回Jr.サクソフォーンコンクール第1位を受賞し神奈川県立弥栄高校芸術科を卒業、東京藝術大学器楽科に入学。学内選抜により、ソリストとして芸大フィルハーモニー管弦楽団とパガニーニ作曲ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調(ソプラノサクソフォーン版)を世界初演。在学中よりプロとして活動する中で従来の一般的な音楽活動に疑問を持ち、日本初の音大生による学生団体を設立し、ライブ配信アプリではまさに先駆者となり演奏配信者が活動する土壌を作るなど、音楽家のSNSブームの火付け役のひとりとなる。大学卒業後、日本中を旅する音楽家として各地で路上ライブも行う。その様子がYouTubeで大ヒットし、全てのチャンネルでの累計再生回数は6000万回を超える。その活動はクラシカル・サクソフォーンの演奏のみならず、主にサクソフォーンのための新曲制作、動画や音声メディアの制作なども行い新たな音楽活動を常に模索している。サクソフォーンを田村哲、田村真寛、冨岡和男、須川展也の各氏に師事
Profile musa[みゅーさ]
洗足学園音楽大学音楽学部をサクソフォン専攻で卒業。これまでにサクソフォンを佐藤典夫、原 博巳、本堂 誠の各氏に、室内楽を池上政人氏に師事。アーティストのサポートやワンマン・ライブなどのソロ活動を積極的に行なっている。またSNSや配信活動などにも力を入れTikTokフォロワー数は15万人を越えTikTok LIVEグローバル音楽イベント【Gimme The Mic】にて世界第五位を受賞し表彰式に出演。音楽部門の代表として2023 TikTok LIVE AllStarsに出演。TikTok LIVE公式アカウントに出演し記事などにも掲載されている。2021年muxio Saxophone duoを結成。第一回室内楽コンクールOSAKAにて3位を受賞。2024年にサックスをウィンド・シンセサイザーに持ち替え、電子楽器にしか表現し得ない音楽を届けるプロジェクト”Cyber Sound Wave”を始動

NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体バック・パネルに装着されている5 PIN DIN 端子からMIDI出力するのと同時に、NuRADからは同じ端子から常時CVアナログ信号も出力。別売のCV-Board for EuroRack、もしくはCVXG-Board for EuroRackのに接続すると、モジュール内でCV信号を取り出してアナログCV出力変換(ミニプラグ)し、外部のアナログ・シンセサイザーなどの音源との接続が可能に。
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意 (カラーによって有償オプションの場合があります)。
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/










