サックス奏者でありウインドシンセ第一人者のひとり、宮崎隆睦(元T-SQUARE)による連載3回目は、NuRADの魅力を深掘りした動画との連動企画として、ランダムに4和音を鳴らすことができるNuRADだけのユニークな機能をピックアップ。動画を解説してもらいながら、その効果や使いどころなど、NuRADでしか味わえない楽しさをレクチャーしてもらおう。
● インタビュー・文 布施 雄一郎 ● 撮影 富田一也 ● 取材協力 島村楽器 新宿PePe店
● Presented by コウスキミュージックアンドサウンド
複雑な操作なしに NuRADなら本体の機能で
ランダムに和音が鳴らせる!
●NuRADは複雑な操作なしに、手軽に和音を鳴らせるんだそうですね。
○そうなんです。それこそマイケル・ブレッカーがRAD EWIで和音を演奏していたときはPCを使って、Logic Proのエンバイロメントという機能を駆使して、1音1音、どの音にどういうハーモニーを付けるかを緻密にコントロールしていました。でも、普通の人はなかなかそこまではできませんよね。それで、例えばハーモナイザーを使って、吹いた音の3度上を平行移動するような和音で演奏していたわけです。それがNuRADなら、本体の機能として和音を鳴らせる設定があって、ポリフォニック・シンセ音源をつなげばすぐに和音が鳴らせるんです。僕はデフォルト設定のままで使っていますが、和音の鳴らし方も細かく調整できるんです。
●しかもランダムに和音を鳴らせるという点がユニークですね。
○今回撮影した動画は3セクションあって、冒頭では同じ音を何度か吹いていて、タンギングするたびに和音がランダムに鳴る様子を紹介しています。4回吹くと和音のパターンが1回ローテーションします。NuRADには、通常のキィの間に“スペシャル・キィ”がいくつか用意されていて、右手で押さえる3つのキィの間にある2つと、左手の人差し指で押さえるキィの上、その3つのキィを同時にポンと押すと(写真①)、本体が点滅し、ランダムに和音を鳴らせるモードになるんです。
● それなら、演奏しながらオン/オフすることも可能ですね。
○吹きながら、何拍かの休符があれば、そこでポンとスイッチを押して機能をオンにしたり、オフにして通常の演奏に戻ることも自由自在です。それで動画の2セクション目はスケールを吹いて、3セクション目でフレーズを演奏してみました。E♭の運指でスタンダード曲「ビリーズ・バウンス」のテーマをゆっくり吹いています。僕の普段の指使いで、よく吹いている基準のような曲で、そこにNuRADがハーモニーを、勝手に(笑)付けてくれているという状態です。整理すると、動画ではまず単音で吹いて、次に自由なフレーズ、最後にメロディーという3本立てになっています。
● 宮崎さんが感じる、この機能の面白さは?
○4回で1ローテーションなので、同じフレーズを繰り返し吹いても、1回目と2回目、3回目で違う和音が鳴ったりするのも面白いですし、何よりも自分でも想像できない発見ができるという楽しさがあります。吹いた後に、“今のはどういう和音なんだろう?”とか(笑)。それも設定画面を見ればわかりますし、自分はどういう和音を吹きたいのかを考えるきっかけにもいいんじゃないでしょうか。サックスって単音楽器ですから、プレイヤー自身も和音に対する意識があまりなかったりするんですよ。だからアドリブを吹く際、理論的な側面を後回しにして、感覚だけでソロを吹いていると、いずれ壁にぶち当たるということも多いと思うんです。そういう点でも、和音を知る良いきっかけになるんじゃないかと思います。
写真① ランダムに4音のハーモニーを発音する機能は、3つの“スペシャル・キィ”を同時に押すことでON/OFFすることができる。
“NuRADを手に入れてよかった”と
感じる機能のひとつ
● この機能をより活かすために、向いているタイプの音源はありますか?
○動画では、僕が普段から利用しているソフト音源“EVI-NER”(写真②)を使いましたが、ポリフォニックで鳴らせるシンセ音源なら、iPadの音源でも何でも大丈夫です。音色もどんなものでも合うと思いますが、ソロなどで飛び道具感を演出するのであれば、フィルターが動いてピョンピョンと鳴るような音色とか面白いんじゃないでしょうか。NuRADはワウ・ペダルを踏むかのような変化をブレスでコントロールできるので、そういう演奏は観客もビックリすると思いますし、息でのコントロールはサックス奏者もやりやすいと思います。
● ステージでは、どういう場面でこの機能が威力を発揮しそうでしょうか?
○この機能を使いながら、ドラムと2人で掛け合いをして、終わったらオフにして普通にメロディーを吹くとか、それこそマイケル・ブレッカーのように、ルーパーなどでリズムを鳴らしながら1人で完結したパフォーマンスを展開するのも面白いと思います。あとはバンドのライブでも、曲のカデンツァや、エンディングに“ジャーン!”と締める手前に1人で吹くようなシーンもいいでしょうね。絶対にみんなが注目してくれますよ!
● まさに次世代ウインドコントローラーならではの、ユニークで魅力的な機能ですね。
○本当にそう思います。今まで、マイケル・ブレッカーのように和音を吹いたりといった演奏がやりたくても、セッティングが複雑すぎてなかなか難しかった。それがスイッチひとつで簡単に楽しめるんですから、まさに他にはない、NuRADならではの面白さだと思います。パフォーマンスの可能性を大きく広げて、本当に“NuRADを手に入れてよかった”と感じる機能のひとつですね。
写真② 今回のランダム・コード演奏機能の紹介動画で使用したウインド・コントローラー用ソフト音源「EVI-NER」。DAWソフト「Logic Pro」上でプラグインとして「EVI-NER」を起動し、NuRADでコントロール。オーディオ・インターフェースのAPOGEE/DuetをMACに接続して「EVI-NER」の音声を出力している。
写真③ NuRADは本体裏側に視認性の高い有機ELディスプレイを搭載。ポリフォニック・モード設定などの様々な設定を、エディターを使わずに本体で調整することが可能。
Profile 宮崎隆睦[みやざき・たかひろ]
1969年生まれ 神戸市出身。バークリー音楽院に留学し帰国後1998年にT-SQUAREに加入。同バンドに2000年まで在籍。2006年ポニーキャニオン(Leafage jazz)より初のソロ・アルバム『ノスタルジア』を発売。2016年7月、サックス四重奏“CLOPS”でDVDをリリースし好評を博す。2019年12月、元WARのハーモニカ奏者リー・オスカーのプロデュースの下、アメリカ録音のアルバム『Love means…More Than Words Can Say』をリリース。
NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体バック・パネルに装着されている5 PIN DIN 端子からMIDI出力するのと同時に、NuRADからは同じ端子から常時CVアナログ信号も出力。別売のCV-Board for EuroRack、もしくはCVXG-Board for EuroRackのに接続すると、モジュール内でCV信号を取り出してアナログCV出力変換(ミニプラグ)し、外部のアナログ・シンセサイザーなどの音源との接続が可能に。
● オプションでユーロラック仕様のCVモジュールがあり、NuRADからのMIDI出力をCVのピッチとブレスのアナログ信号(ミニプラグ 2系統)に変換可能
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意(カラー・オプション代 16,500円) 後付け可能なカスタム・トップパネル・オプションもあり
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/