1970年代にマイケル・ブレッカーが愛用したことで知られるSteinerphone。その流れを汲むEWIオリジナル開発者、ナイル・スタイナーの開発チームが手掛けたRAD EWIが進化を果たし、2020年NuRADとして復活した。連載1回目の前号ではサックス奏者でありウインドシンセ第一人者のひとり、宮崎隆睦(元T-SQUARE)にNuRADとの出会いや導入の経緯を語ってもらったが、今回は宮崎が実際にどのような音源を使い、どういった設定でプレイしているのか、宮崎流“NuRADセッティング術”を紹介する。同時に、自身のNuRADに施しているカスタマイズについても語ってもらった。
● インタビュー・文 布施 雄一郎 ● 撮影 言美 歩 ● 取材協力 島村楽器 新宿PePe店
● Presented by コウスキミュージックアンドサウンド
自身の好みに カスタマイズできるのも
NuRADの魅力
●宮崎さんは、ご自身のモデルをカスタマイズされているそうですね。
○そうなんです。T-SQUAREの大ファンで、カスタマイズしてくださる方がいて。ご自身でもリリコンなどをお持ちで、しかも機械に精通された方なので、アカイEWIのメンテナンスをしていただいたり、3Dプリンターもお持ちなので、手に入らないパーツを作ってもらったりしていて。その方が、NuRADのカスタマイズもできるということで、もっと使いやすくなったらいいなという部分を改造していただいたんです。
●どんな点をカスタマイズしたのですか?
○RHp1キィをサックスでトリルをする際に使うサイドF#キィのようにしようと思って、上側に伸ばして(写真①)。ただそうすると、Dキィに指が触ってしまいやすくなるので、スペーサーを入れてDキィを少し高くしました。見た目でパッと分かる違いだと、本体からマウスピースまでのプレートを短くしたことですね(写真②)。あと、グライド・スイッチを、EWIと同じオクターブ・ローラーの横に増設しました(写真③)。
●どうしてプレートを短くしたのですか?
○“短くできますよ”と言われて試してみたら、すごく吹きやすくなったんです。あとは、ストラップ・フックを少し上側に移動させて……(写真④⑤)あっ、今気づいたんですが、カバーを止めるネジもお洒落な物に変えてくださっていました(笑)。以前のEWIって、自分で色を塗ったり、キィを金メッキにする人がいたりと、皆さんカスタマイズを楽しんでいましたよね。NuRADも、メーカーさんが推奨しているわけではないですけど(※)、そういうふうな楽しみ方ができる点が、とても面白いなって感じますね。
※メーカーは標準仕様での使用を推奨、動作保証を行っております。カスタマイズを行う際は、上記の内容を十分に理解したうえででご検討下さい。
写真④⑤ 本体からマウスピースまでのプレートの長さを短くすることで演奏性を宮崎にマッチするように改造したという。長さを調整したことに合わせ、ストラップ・フックが若干上部に移動されているのが写真で確認できる。
NuRADのCV出力で
アナログ・シンセを コントロール
●では、演奏面について教えてください。
○宮崎さんは、音源は何をお使いですか? ソフト音源は、ウインド・シンセに特化した「IFW」(画面①)や、NuRAD向けに作られている「EVI-NER」(画面②)を使用しています。 僕の使い方は、まずDAWにトラックを作り、曲順に合わせてトラック毎に音色を並べて、トラックを切り替えることで音色を変えられるようにしています。もちろんDAWを使わず、ソフト・シンセをスタンドアローンで立ち上げても演奏できるんですが、DAWだとMIDIモニター画面を出せるという点で安心感があるんです。
●「IFW」と「EVI-NER」は、それぞれどんな違いがありますか?
○「IFW」は、無料なのにすごくよく考えられたソフト・シンセで、オシレーターが4つあったり、とても細かい音作りができます。一方で「EVI-NER」は、15ドルとお手頃ながらプリセットがとてもいい。僕も好きな音色が多くて、そこが気に入っています。
画面① 「IFW」はウィンド・コントローラーでの操作に特化して開発されたソフト音源。IFWはInstrument For Wind controllersの略
画面② 「EVI-NER」はNuRADのトランペット運指バージョンであるNuEVIに向けて開発された、ウインド・コントローラー用ソフト音源
●ソフト・シンセはMIDIで鳴らすわけですが、宮崎さんはCV(Control Voltage)もお使いですよね。
○はい。CV出力でアナログ・シンセを鳴らすこともあります。音源に使うシンセは、オーバーハイムSEMやベリンガーMODEL D、あと“3340(名器プロフェット5などに使われている音源チップ)”を搭載したユーロラック・モジュールを鳴らしたりしています(写真⑥)。アナログ・シンセは、やはり滑らかな音色変化が大きな魅力ですね。
写真⑥ 宮崎がNuRADのCV出力のコントロールで使用している主なアナログ・シンセ。写真上部左のユーロラックには、NuRAD専用にオプションとして販売されているCV Board(ラック内写真左/MIDI端子を持たないアナログ・シンセやモジュラー・シンセなどのコントロールが可能)、ラック内写真右よりIntellijel DesignsのTriplatt(アッテネータ)、uVCA II(VCA)。“息の情報量に対して変化幅が少ないと思ったときにこれらのモジュールを使用すると思い通りの吹奏感が得られます“(宮崎談)。写真右は伊東たけしがリリコンで使用していたことで知られるアナログ・モジュール、オーバーハイムSEM。
●ソフト・シンセとアナログ・シンセは、どのように使い分けているのですか?
○多彩な音色を求められる大きな現場ではソフト・シンセを使って、セッション・ライブのように、自分が好きな音色で演奏できるときにはアナログ・シンセをよく使っています。
●では、本体側の設定は、どのような部分を調整していますか?
○僕は、音源によってブレス・カーブ(写真⑦)を切り替えています。例えば、アナログ・シンセなら音が滑らかに変化するので、ブレスの強さに対して直線的に変化するリニア(LIN)を選択しますが、ソフト・シンセのときはZ字カーブにしています。これだと、吹き始めは楽に鳴ってくれて、そこからちょっと負荷がかかるような感じになるので、僕の場合はニュアンスが出しやすいんです。バイト・コントロールは、標準的にビブラートに設定しています。ただ、これはEWIでもそうなんですが、1回噛むとピッチが上がって落ちて、口を緩めるとピッチが下がって元に戻るという仕様で、1回噛むことでピッチが2度動くんです。僕は設定を変えて、MIDIのCC(コントロール・チェンジ)で、噛むとピッチ・ベンドが上がるようにしています。あと、設定ではありませんが、ベンド・プレートにテープを斜めに貼ってて。これで感度を少し鈍らせて、押さえる場所でベンドのかかり方を自由に変えられるようにしているんです。
●初心者に設定面でのアドバイスを。
○まずはブレス・カーブですね。音源によって演奏感が随分と変わりますから、自分が使う音源にフィットしたカーブを見つけるところから始めるのが一番いいと思います。
写真⑦ NuRADは本体背面に有機ELディスプレイを搭載。ブレス・カーブが12段階で切り変え可能なほか、ブレス感度やMIDI設定など様々な調整を本体のみで行うことができる。
Profile 宮崎隆睦[みやざき・たかひろ]
1969年生まれ 神戸市出身。バークリー音楽院に留学し帰国後1998年にT-SQUAREに加入。同バンドに2000年まで在籍。2006年ポニーキャニオン(Leafage jazz)より初のソロ・アルバム『ノスタルジア』を発売。2016年7月、サックス四重奏“CLOPS”でDVDをリリースし好評を博す。2019年12月、元WARのハーモニカ奏者リー・オスカーのプロデュースの下、アメリカ録音のアルバム『Love means…More Than Words Can Say』をリリース。
NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン
■Berglund Instruments NuRADR2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)
主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体側面にUSB端子とブレスCV OUT(ミニプラグ、ブレス出力1系統)、裏側にはMIDI OUTを搭載。ソフトシンセやハード音源、アナログシンセサイザーなど様々な音源との接続が可能
● オプションでユーロラック仕様のCVモジュールがあり、NuRADからのMIDI出力をCVのピッチとブレスのアナログ信号(ミニプラグ 2系統)に変換可能
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意(カラー・オプション代 16,500円) 後付け可能なカスタム・トップパネル・オプションもあり
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能
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