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本誌連動企画

Berglund Instruments NuRADユーザー・レポート-①  宮崎隆睦 第1回 NuRADとの出会い

次世代ウインドコントローラーNuRAD
その魅力と実践的活用法を宮崎隆睦が徹底レポート!!

1970年代にマイケル・ブレッカーが愛用したことで知られるSteinerphone。その流れを汲むEWIオリジナル開発者、ナイル・スタイナーの開発チームが手掛けたRAD EWIが進化を果たし、2020年NuRADとして復活した。多くのウインドシンセ奏者が待ち望んでいた注目のNuRADを宮崎隆睦(元T-SQUARE)が全4回に渡り徹底解剖。第1回は、宮崎のNuRADとの出会い、そして愛用するに至るまでの経緯を語ってもらった。

● インタビュー・文 布施 雄一郎 ● 撮影 言美 歩 ● 取材協力 島村楽器 新宿PePe店
● Presented by コウスキミュージックアンドサウンド

息を吹き込むことで、人間っぽさや
  ウインドシンセならではの表現が可能に

● 宮崎さんが初めてウインドシンセに触れたのはいつごろでしたか?  
○高校生の時です。バンドでT-SQUAREをコピーすることになって、発売されたばかりだったヤマハWX-7(1987年発売)を借りて、一度だけライブをやったんです。そしてその次が、いきなりT-SQUAREになるんです。加入が決まって、マネージャーから“2週間後にレコーディングが始まるから、せめて『TRUTH』だけは吹けるように”と言われて。そのときは、アカイEWI 3020(1994年発売)と音源にEWI 3030m(同)を使っていて、T-SQUARE時代は、本田(雅人)さんもよく使っていた「AXIS」という音色をメインで使っていました。そうやってT-SQUAREに在籍した3年間で、生楽器と同じように演奏するのではなく、ウインドシンセならではの表現という面白さを見つけることができました。

● 何かきっかけがあったのですか?  
○マイケル・ブレッカーはもちろん、海外の素晴らしいプレイヤーたちが、それまで僕が使っていなかったような音色で、ウインドシンセならではの表現をしていることに気が付いたんです。しかもウインドシンセって、鍵盤タイプのシンセと違い、息を吹き込むことで、いい意味での“不安定さ”を加えられる。そこに人間っぽさや、息を吹き込む楽器ならではの表現ができるんだと分かって。ちょうどEWIが4000s(2006年発売)に進化して、操作性がよりダイレクトなものになったことも重なって、そうした面白さをより強く感じるようになったんです。そこからは、ウインドシンセ界が盛り上がればいいなと、EWI 5000(2014年発売)とローランドのエアロフォン(2016年発売)の吹き比べ動画を撮らせていただいたり、海外製のユニークなウインドシンセをいろいろと購入したりと、本当にいろんなモデルを試し続けています。

NuRADは、古いところにも
  新しいところにも行ける素晴らしい楽器

●最新モデルのNuRAD(2020年発売)とはどのように出会ったのですか?
○アカイがEWI 4000sを国内開発していたときに、その部署にサンプルとして、Steinerphoneの後継モデル、つまりRAD EWIのモデル違いがあったんです。ほぼ今のNuRADに近い状態で、軽いし、操作性がすごく滑らかで“何だこれは!?”と驚いた記憶があって。それからかなり時間が経って、EWI 4000sとEWI USB(2008年発売)が終売になるかもしれないという噂を耳にして“それは困るな”と思ったときに、そのモデルを思い出したんです。実はちょうどそのころ、僕はあるきっかけでスタイナーとメールをやり取りしていたので、思い切って“RAD EWIを作って欲しい”とメールしたら、ぱったりと返信が来なくなって(笑)。すると、しばらくしてNuRADが発表され、しかも、かつてアカイの社長をされていた鈴木功さんが日本の代理店をされていることを知って、すぐに連絡を取りました。

● 実際にNuRADを手にしての第一印象は?
○まず両手の構えが、上下ではなく平行になるという点。これが一番の特徴ですよね。慣れるまでに少し時間がかかりましたが、一度慣れてしまえば、今はもう違和感はありません。あとは、機能面でできることがものすごく増えていて、中でもCV出力(オプション)に対応している点が、購入の決め手となりました

●CV出力があれば、アナログ・シンセを音源に使えるということですよね。
○そうです。これを手に入れるまで、EWIはずっとMIDI音源を使っていたんです。そのMIDI機能も、NuRADにはワイヤレスMIDIモデルが用意されていて、発音遅れなどはまったく感じなくて、とても使い勝手がいいです。今はいいソフトウェア音源がいっぱいありますから、本体に音源を内蔵していないことで、むしろいろんな音が鳴らせるという拡張性を感じています。あと面白いのが、ランダムに和音を鳴らせる機能。それこそマイケル・ブレッカーがやっていたようなことを、NuRADだけで手軽にできてしまうんです。あとマウスピースは、息が抜けないタイプ、つまり口の両端から息を漏らして音を出すという初代EWI(1000)と同じシステム。EWI 4000sも息が抜ける空気孔が小さかったので、僕は口の横から息を出して吹いていたので、同じように吹いていた方なら、違和感なく演奏できると思います。

●さまざまなタイプのウインドシンセを試してきた宮崎さんにとって、NuRADはどのような存在だと感じていますか?
○僕は長くEWIに慣れ親しんできて、その原型を作り出したナイル・スタイナーが新しく作った楽器ということで、EWIの先祖のようでもありつつ、機能面は最新。先ほども話したように、CV出力を使えば、最新のモノで、何十年も前の古いアナログ・シンセをコントロールできるという点に、僕は面白味を感じています。僕自身、どんどん新しいモノを理解して前に進みたいと考えていますし、多くの方にも新しいモノに目を向けて欲しいと感じていて。そういう意味でNuRADは、古いところにも行けるし、新しいところにも行けるという、両方の“いいどころどり”をした素晴らしい楽器だと感じています。

Profile 宮崎隆睦[みやざき・たかひろ] 
1969年生まれ 神戸市出身。バークリー音楽院に留学し帰国後1998年にT-SQUAREに加入。同バンドに2000年まで在籍。2006年ポニーキャニオン(Leafage jazz)より初のソロ・アルバム『ノスタルジア』を発売。2016年7月、サックス四重奏“CLOPS”でDVDをリリースし好評を博す。2019年12月、元WARのハーモニカ奏者リー・オスカーのプロデュースの下、アメリカ録音のアルバム『Love means…More Than Words Can Say』をリリース。


NuRADのオプション・カラー 左からトワイライト、スノー&アイス、パープルレイン


■Berglund Instruments NuRAD R2
価格 258,500円 (ベーシック・モデル/税込)
価格 267,300円 (Lipoバッテリー搭載モデル/税込)

主な特徴
● スタイナーホーンとEWIの基本的な演奏方法を踏襲
● バイト・センサーに高精度の気圧センサーを採用。更に細かいニュアンスが再現可能に
● 本体重量約650g、長さ46cm 幅14.5cm 高さ4.5cmと超軽量コンパクト設計
● 有機ELディスプレイを搭載。ブレスカーブや感度の調整や、MIDIの設定などをエディター不要で調整可能
● 本体側面にUSB端子とブレスCV OUT(ミニプラグ、ブレス出力1系統)、裏側にはMIDI OUTを搭載。ソフトシンセやハード音源、アナログシンセサイザーなど様々な音源との接続が可能
● オプションでユーロラック仕様のCVモジュールがあり、NuRADからのMIDI出力をCVのピッチとブレスのアナログ信号(ミニプラグ 2系統)に変換可能
● 標準カラーObsidianに加え、オプション8色を用意(カラー・オプション代 16,500円) 後付け可能なカスタム・トップパネル・オプションもあり
● ストラップを使用しての演奏スタイルのほかに、付属ハンドレストを使用してのストラップレス奏法にも対応
● Lipoバッテリー・オプションを搭載することで最大14時間の駆動が可能

製品Webサイト

㉄ コウスキミュージックアンドサウンド
TEL:048-494-1017 
E-mail:info@kohske.com
Web https://kohske.com/


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