サックスのベル部分にクリップで取り付ける小型のマイクは、演奏時に動きの大きいパフォーマンスを行う際の強い味方。 国内外のメーカーから多くの製品が発売されている中、音質と使いやすさの両面で高く評価されているのが、 デンマークのブランドDPA MicrophonesのVO4099です。愛用者である宮崎隆睦さんにその魅力を語ってもらいました。
撮影:内山 繁(Whisper Not)、取材/文:西本 勲
不自然なシャキシャキ感がなく、 原音をそのまま拾ってくれている印象
アタッチメントが豊富なのもうれしいですね
DPAのマイクを使うようになった経緯は?
●クリップ型のコンデンサー・マイクは、以前からいろいろなメーカーの製品を使ってきましたが、どこかシャキシャキしたところが残る音だと感じていました。そんな中、DPAのマイクは音が良いという評判を聞いて試してみたところ、シャキッとしていながらナチュラルで、作られていない感じの音がしたんです。本当に原音のまま拾ってくれているという印象で、それからずっと使っています。
●共演者やPAエンジニアからの反応は?
●使い始めたときから、すごく自然で良い音だねという感想を聞きました。僕がよく出演している目黒ブルースアレイなど、標準でVO4099を置いてくれているお店もあって、自分のマイクを持って行かなくても、いつもの自分らしい音で演奏できます。
●クリップ型マイクを選ぶときの基準は?
●音質が重要なのはもちろんですが、僕はサックスもフルートも吹くので、アタッチメントが豊富なものを選んできました。その点、DPAのマイクはアタッチメントやコネクターの種類がとても豊富で驚きました。僕が愛用しているワイヤレス・ユニットに対応したコネクター変換アダプターもあります。ワイヤレスに関しては、僕は未だにB帯のものを使っているのですが、今後2.4GHz帯にすることになっても、そのメーカーに合わせたアダプターが発売されているので安心です。そういう意味でも、使い勝手の良いマイクですね。
●それ以外にVO4099の特長を挙げると?
●前のモデル(4099)はグース・ネックの根元からケーブルがそのまま伸びていましたが、VO4099ではケーブルが着脱可能になりました。そのため、片付けや運搬の際にケーブルがよじれる心配が少なく、万が一断線してもケーブルだけを交換できます。僕は両方のタイプを持っていますが、その2本で音のバラつきを感じないところも素晴らしいです。
●これから導入を考えている人にアドバイスをいただけますか?
●VO4099に限らず、マイクの向きによって音が変わるので、出そうとしている音に合わせて取り付け方を考えたいですね(下の写真参照)。また、ワイヤレスを使わない場合は、ケーブルの取り回しにも注意が必要です。マイクからケーブルがそのまま垂れ下がった状態で使っている人をときどき見かけますが、うっかりケーブルを踏んだりするとマイクが楽器から外れてしまう危険性があります。ベルト・クリップなどに一度ケーブルを引っ掛けてから足元を這わせるようにすれば、そうした事故の可能性を低くできます。楽器やマウスピースなどと違って、マイクはいくつも吹き比べて選ぶことはなかなか難しいと思いますが、DPAのマイクは先ほども言ったように個体差が少ないので、安心して買っていただいて大丈夫じゃないでしょうか。
Profile 宮崎隆睦[みやざき・たかひろ]
1969年5月23日生まれ、神戸市出身。中学時代にサックスを始め、大学卒業後に米バークリー音楽院に留学。帰国後は1998年〜2000年までT-SQUAREで活動。現在はさまざまなセッションや、Teatro Raffinato、TRI HORN BUFFALOといったグループで活動する一方、各地でレッスンやクリニックも行っている。
マイクの向きでサウンドが変化
「ドンと太い音が欲しいときはベルの真ん中を狙い(写真左)、ちょっとだけエッジの方に向けると、少しシャキッとした音になります(写真右)。ラバーのマウスピースで演奏するときはエッジ寄りで、メタルのときは真ん中を狙うという使い分けをすることもありますね。また、特に直管のソプラノ・サックスの場合、最低音をよく吹く人はマイクの“吹かれ”が気になるかもしれませんが、そういうときはベルの外側に向けて、最低音の1つ上のトーン・ホールを狙うと良い結果が得られます。こういうマイクを使うことは、サックスのどの部分から音がどのように出ているかを意識するきっかけにもなると思います」(宮崎)
2種類のクリップが選択可能
楽器への取り付けには、サックス/トランペット用クリップSTC4099(写真左/オープン価格)または2016年に発売されたクランプマウントCM4099(写真右/オープン価格)を使用。VO4099Sサックスセットは、VO4099HiとSTC4099、ケーブル類がセットになったパッケージだ。「STC4099は柔らかくて少ししなるので、キィ・ノイズを拾いにくいのが特長。今回試させていただいたCM4099は、固定力がとてもしっかりしています。Teatro Raffinatoのライブではハイチェアに座って譜面台を前に置いて演奏するのですが、楽器の持ち替えが多いので、譜面台にCM4099を付けてやってみるとスマートかもしれませんね」(宮崎)
幅広い楽器に活用できる デンマーク発の 超単一指向性マイク
d:vote VO4099シリーズ VO4099S サックスセット
オープン価格
市場予想価格:50,000円前後(税別)
さまざまな楽器に取り付け可能な小型軽量のコンデンサー・マイク。ハウリングに強い超単一指向性で、水や湿気にも強くさまざまな演奏環境に対応。サックスをはじめ幅広い楽器に適した高感度モデルVO4099Hiと、トランペットなどに向いた低感度モデルVO4099Loをラインナップしている。
【主な仕様】
●カートリッジ/プリポラライズド:コンデンサー型 ●周波数レンジ(±2dB)/80Hz〜15kHz ●感度(±3dB)/−44.5dB re 1V/Pa(Hi)、−54dB re 1V/Pa(Lo) ●マイク部寸法(直径×全長)/5.4×45mm ●質量/20g ※除ケーブル ●グースネック長/140mm
問い合わせ先:ヒビノインターサウンド株式会社
電話:Tel 03-5783-3880
(月〜金曜/9:30〜18:00 祝祭日および指定休日除く)
Web : https://www.hibino-intersound.co.jp/dpa_microphones/