サックス好きのための専門誌Saxworld

本誌連動企画

キャノンボールから 20周年アニバーサリー・モデルが登場!

CANNONBALL 20TH ANNIVERSARY MODELS

従来より大きなベル(ビッグベル)と黒いルックスという独自のスタイルで現代サックスの新時代を築き上げたキャノンボール。同社が1996年の設立から20周年を迎えたことを記念しアルト、テナー各3つ、計6機種の特別仕様モデルが発売されることになった。独自のアイデアとたゆまぬ研究から生まれたサウンドや演奏性とともに、キャノンボールの特徴であるサテン・ブラック仕上げや準宝石をあしらったキィのボタンなど重厚でルックスの美しさも同社の魅力だ。今回の20周年アニバーサリー・モデルでは独自の手の込んだ彫刻と、ビッグベルストーンシリーズにはブルーソーダライト、ビンテージリボーンシリーズにはレッドファイアジャスパーという準宝石の採用により、そのルックスがさらに磨きあげられている。ここではテナー3機種にフォーカスし、キャノンボール・サックスの魅力にあらためて迫ってみた。 Canonball_3 キャノンボール・ユーザー・トーク

藤田淳之介[TRI4TH]が語る キャノンボール・サックスの魅力

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“息は入りやすいが吹き応えもある” 相反する要素を兼ね備えた稀な楽器

こう吹きたいということが再現できる楽器

●藤田さんがキャノンボールを使用されるようになったキッカケは? ●最初が2005~6年ころなので、キャノンボールを使いだして10年になりますね。その当時僕はバイオリンが入っているインストゥルメンタル・ユニットで活動していたのですが、クロサワ楽器さんでキャノンボールのソプラノ・サックスを吹かせていただいたらそれがすごく良かった。それからですね。当時はアルトとソプラノを使っていたのですが、ソプラノには僕は特にこだわりが強くて、こう吹きたいということが再現できる楽器じゃないと嫌なんですよ。キャノンボールを吹いて“あ!これだ!”ということになりました。 ●音色の印象はどうでしたか? ●そのとき試奏したのがブラック・ニッケルのアーク(セミカーブド)・ソプラノだったのですが、音が“ペー”と出てしまうのではなく包み込まれるような柔らかさもあって、かつ息がどんどん入っていく。ほかのソプラノだと息が入ると“ピャー”となったり、逆に音にまとまりがあると息が詰まりがちになったりすることが多いのですが、キャノンボールの場合は“息は入りやすいが吹き応えもある”という相反する要素を兼ね備えてた稀な楽器だなと思いました。 ●そのことはソプラノ以外にも通ずるキャノンボールの特徴でしょうか? ●そうですね。ビッグベルシリーズとかビンテージリボーンシリーズの塗装など、それぞれのモデルで違いはあるのですが、スピリッツとして、息がストレスなく入るというところは共通していると思います。

これまでの概念にとらわれずチャレンジするブランド

●現在藤田さんが使用中のモデルは? ●ソプラノは最初に入手したアークのブラック・ニッケルで、アルトとテナーがビッグベルシリーズのBR(ブルート)です。アルトはビッグベルのブラックニッケルでスタートして途中でBRになり、テナーはビンテージリボーンのLADY GODIVAを使っていたのですが、今のBRが出たときにビッグベルに変えました。 ●キャノンボールの前に使用されていた楽器と比較してキャノンボールはどんな良さがありましたか? ●ソプラノに関してはその前に使用していた楽器も息は入ったのですが、ストレートとアーク・ソプラノという形の性質もありますが響きがとにかく多く、丸みのあるサウンドを出してくれるという点ですね。近年開発された楽器はピッチは良いが吹奏感が物たりないという傾向にあるように感じますが、キャノンボールはその両方を兼ねそなえてくれる点です。アルトもそこは似ていて、当時はフュージョンに近いニュアンスの演奏をすることが多かったので、とにかくストレスなく息が入ることと、力一杯吹いている感が欲しかったんです。オーバー・ブロウにならなくてピッチもいいところにはまるというのが当初の狙いでした。でも、真逆のことを言っていますが今のBRにしてからは、軽く吹いてもとにかく楽器が鳴ってくれるのでどちらにも対応できるということなのかな?と 思っています。それはアンラッカーをさらに特殊加工(Brute)にすることによって明るすぎず、マットな部分がありつつ中低音がとにかく膨よかになる。そういう部分でレコーディングの現場で楽器に助けられるということが大きいです。 ●最後にキャノンボールに20周年のお祝いのメッセージを頂きたいのですが。 ●日本では今のように知られるようになるまでは大変だったと思います。僕も10年前に最初に試奏させていただいたときは恥ずかしながらキャノンボールという楽器を知らなかったんですね。しかし、僕はパッと吹いてすぐ虜になったので、絶対に吹いたり聴いてもらったりすれば魅力が伝わる楽器だと思います。しかも楽器のラインナップや塗装のバリエーションも多く、その意欲はすごいですね。そこはこれからも追求してもらいたいですし、それを僕自身楽しみに応援しています。キャノンボールはこれまでのサックスの概念にとらわれずいろんな新しいことにチャレンジしているという印象が強いですね。その中でサックスの新しい材質や音色をさらに研究して製品化してもらうことで、またそれを吹いた僕らのプレイがまた変わることも絶対あると思います。僕がいうのもおこがましいですが、キャノンボールと一緒に新しい楽器を創っていけたらいいですね。


 

T5-20 ビッグベルストーンシリーズ

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レンジが広くライブ栄えするサウンド

 ブラック・ニッケル加工だと、息の入れすぎには注意しなければならない傾向にあるように感じますが、この20周年モデルは音がすごく抜けるので、従来モデルより息がかなり入りますね。それに若干きらびやかなサウンドです。音の成分もレンジが広い感じですのでライブでも栄えると思います。  見た目もカッコイイですよね! 僕はバリトンもサテン・ブラックのBiceB “RAVEN”を所有していますが、現場でよくカッコイイとよくいわれます。印象に残る楽器を使うことって自分のキャラクターを覚えてもらうのに重要だと思います。そこに腕が伴わないと“何してんだ!”となることもあるかも知れないですが(笑)。そこは自分の頑張るためのエネルギーに変えるということで。あの塗装であの吹奏感だと見た目のイメージとあまり変わらない音を追求できると思います。聴いている人に与えるインパクトを統一できるという意味でもすごくいいと思います。


TVR/20-L ビンテージリボーンシリーズ/ダークアンバーラッカー

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心地よい響きが魅力

 キャノンボールがビンテージ・サウンドを追求したモデルです。以前同機種を吹いていたときはもっと突っ込んで吹きたいと思いノーラッカー特殊加工のBRに変えてしまったのですが、当初のイメージとちょっと違って息も入るし響きもいいところが入っているなと思いました。しかも楽に吹けます。  この楽器のように人が聴いていて心地よい響きが入っていると、強く吹けば音が増幅されるし、軽く吹いたときに “ギーン”と響くのではなく“ホー”ってマイクに乗る。そういうこところがいいと僕は思います。  いわゆるオールドの楽器というのはピッチだとか楽器の状態も選ばなきゃならないところがあるのですが、この楽器は手にした時点で間違いなく調整されているし、状態のいい楽器を探さなくてもすぐに手に入るということは良いことだと思いますね。


TVR/20-BR ビンテージリボーンシリーズ/ノーラッカー特殊加工

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特殊加工塗装によるダーティーなサウンド

 僕はこのアンラッカーの特殊加工塗装の吹奏感と音色が本当に好きで、アルトとテナーを一気にこの特殊加工塗装の楽器に変えたほどです。ラッカーなどの艶やかなサウンドも良いのですが、特殊加工塗装を施すことでちょっとダーティーな部分が出てくる。この加工の効果でダーティーな感じに歌いやすく、吹きたいフレーズとか音楽性も僕は変わってくるのかなと思います。  また、今僕が使っているビッグベルと違って管が細いので、息が少なくてもその音が出しやすいというのは“ビッグベルだとちょっと”という人にはいいですね。最近レコーディングなどで操作性を求められるときがすごく多くなって、それに負けないように鍛錬しなきゃなって思っていますけれど、そういう意味ではこの楽器はすごく楽してスポットにいけるという感じですね。


ファット・ネック試奏

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息が無限に入りますね!

T5-20(ビッグベルストーンシリーズ)にはスタンダード・ネックのほかにファット・ネックも付属します。今回の試奏はスタンダード・ネックで行いましたがファット・ネックでも試奏してみましょう。息が無限に入りますね(笑)! きらびやかな成分が息を入れることによって増えるので、より派手になります。マウスピースをメタルに変更するまでは出来ないけれどもっと派手でカッコいい音を出したいという人はこれにすればはいいと思います。特に女性で吹いても吹いてもカッコいい音が出ないという人が結構多いんですね。そういうときにこのアイテムがあればその成分が確実に増えるので、ものすごく助けてくれると思いますよ。


総評

各モデルお勧めのユーザー層は?

T5-20はスムース・ジャズのようにニュアンスをグッとつける場合もかなり対応してくれると思うので、スムース・ジャズからクラブ・ジャズの系統でカッコ良く吹きたいという人には合っているのではないでしょうか。TVR/20-Lは音がきらびやかな部分もすごく入っているので、体力があまりなくてもパッといい音を出したいという人は思っている音を再現しやすいのではないかと思います。TVR/20-BRの方は、自分の音が創りやすく操作性もいいでしょね。レコーディングにも使えますし、ストレート・アヘッドなジャズを吹く人も大丈夫だと思います。本当にオールマイティに薦められる楽器です。


【試奏環境】マウスピース:ピーター・ポンゾール M2 105 、リガチャー :ピーター・ポンゾール付属
リード :ダダリオ・ウッドウインズ 、ジャズセレクト アンファイルド 3M

Profile 藤田淳之介

今年で結成10周年を迎えた人気クラブ・ジャズ・バンドTRI4THのサックス担当。現在はバンドの活動とともに多数アーティストのレコーディング、ライブサポートや、作編曲家としても精力的に活動している。A5-BS・T5-BSなどのキャノンボール・サックスを愛用している。


LATEST ISSUE

2024年9月12日発売

サックス・ワールドVol.34

◎表紙&巻頭特集 連続テレビ小説『虎に翼』とサックス 今井悠貴/上川周作/井出慎二/屋嘉一志

インタビュー
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・対談:カーク・ウェイラム × 本間将人
・マーク・ターナー・遠藤真理子・千野哲太

◎サックス・プレイヤーズ・ギア・ファイル
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ジャズの巨匠:デイヴィッド・サンボーン追悼企画 拡大版
◎音の匠:スタジオ・サックス・プレイヤーの仕事
 トレヴァー・ローレンス(スティーヴィー・ワンダー、マービン・ゲイ、ザ・ローリング・ストーンズ)

◎インスト企画
・新素材リード最前線2024
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◎付属CD&スコア連動企画(模範演奏&カラオケ)
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「アメイジング・グレース」レゲエ・アレンジ(ts)/演奏:屋嘉一志
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・「バッハ 15インベンション 第15番 BWV 786」(as/ts)/演奏:門田”JAW”晃介

 
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