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ローランドが提案するデジタル・ウィンド楽器 エアロフォンの楽しみ方② Aerophone × Takahiro Miyazaki

宮崎隆睦氏がエアロフォンをチェック!

電子楽器のローランドが管楽器プレイヤーに提案する全く新しいコンセプトのデジタル・ウインド楽器“エアロフォン”。昨年秋に発売されるやいなや話題となり、現在も品切れが続くほどの人気を集めているという。今回は元T-SQUAREのメンバーで、ウインド・シンセの第一人者としても知られる宮崎隆睦氏にエアロフォンの魅力とその可能性についてお話を伺った。

取材・文:サックス・ワールド編集部、撮影:内山 繁(Whisper Not/製品写真を除く)


ウインド・シンセならではの アプローチを見つけないといけない

● 宮崎さんはT-SQUAREの活動などを通じてウインド・シンセの第一人者という認識をみなさんお持ちだと思いますが、ウインド・シンセとの出会いからお話をお聞かせください。

● 高校生時代にバンドでT-SQUAREのコピーをやることになりまして。それでヤマハのWX7を借りて一度ライブをやった経験はあったのですが、その後ウインド・シンセを吹くことはなかったんです。で、しばらく時間が空いていよいよT-SQUAREへの加入が決まった日にアカイに連れて行かれて“2週間後にレコーディングがあるから、せめて「TRUTH」だけは吹けるようにしておけ”ってその場でEWIを渡されて(笑)。

● 2週間でEWIをマスターできたのですか?

● そこからの2週間は本当に地獄で。一番苦労したのはサックスでは口元でできたことがEWIでは口元でできない。いわゆる口ベンドですね。それを指でコントロールしなきゃいけなかったので、その練習ばかりしてました。

● 大変な経験でしたね(笑)。そのとき、サックス奏者としてEWIに魅力を感じたところとフラストレーションを感じたところは?

● 最初はフラストレーションしかなかったですよ。EWIの曲をただ単に演奏するだけではなくて、サックスと同じような表現をするにはどうしたらいいだろう?って、もうこのせめぎ合いでした。でも、T-SQUAREに加入して2年目ぐらいに、“サックスとは違うものとして表現の仕方を考えなきゃ駄目なんじゃないか?”と、そう思えたときにフッてEWIがサックスと同列に来れたんです。EWIをサックスと同じようにしようと思ってもどだい無理ということがようやく分かったんですね。プレイヤー側で違うアプローチを見つけなければならないっていうことがね。

● 結構な時間が掛かりましたね。

● 最初の1年はコントロールしようとすることでもう必死だったんですね。EWIならではの表現っていうことに意識を向けるようになって、それからですね。ウインド・シンセが本当に楽しいなって思えるようになったのは。

エアロフォンは操作性と音色が これまでのウインド・シンセと違う

● エアロフォンを使ってみて、今までのウインド・シンセと違うと感じたところは?

● 操作性と音色、この2つがこれまでのウインド・シンセとは違うものだっていう認識は初めて吹いたときからありました。エアロフォンの音色は最初からすごくいいなと思っていました。同じPCM音源を搭載しているほかのウインド・シンセはデータ容量が大きくクオリティの高い音色というのを売りにしているのですが、変な言い方ですけど、“すごくサックスの音に似せてます。でも音が似てるだけで、実際はサックスと同じような吹き方をすると似て聴こえない”ということが起きるんです。例えばですが、フルートの音色で演奏する場合音色はフルートにすごく似てるんですけど、吹き手が意識して吹き方を変えなければたぶんフルートの音に聴こえないんです。だからそれは吹き手で工夫しなきゃいけないなって思うんですけど、エアロフォンはすごく言い方が悪いですけど、適当にちょうどいいって感じました。これぐらいの強さでこう吹いたときに、これくらいの音色になるだろうなっていうのが、ちゃんと計算されているというのを後から説明書を見て納得しました。

● スーパーナチュラル音源ですね。

● この音源だと吹いたときの音色の変化の感じまでもがちゃんとサンプリングされているっていうことが、すごくよく分かります。だから“あ、自然に吹けるんだな”っていう第一印象がとても大きかったですね。

● エアロフォンを演奏した際の宮崎さんの感想を順にお聞かせ頂きたいのですが、まず吹奏感はいかがでしたか?

● 吹奏感は発売直前にEWIとの比較動画の撮影用に吹かせて頂いたときから、違和感はなかったんですよ。すごくナチュラルに吹ける。EWIは息が余っちゃうんですよ。少しの息で済むとも言えるのですが、おもいっきり吹いているのに、“あ、これだけしかボリュームが変わってない”というストレスが実はあります。それをうまく回避するために口の端を開けて息を逃がしながら吹いていたりするんですよ。それをエアロフォンはする必要がない。そのストレスがないなっていうのはすごくいいですね。僕はEWIのレッスンもやっているのですが、口の端から息を逃がすのは難しくってできないって生徒もいるんですよ。

● マウスピースにリードが付いていることに関する吹き心地はいかがでしょうか?

● “サックスと比べると”ですけど、少しリードが柔らかいせいで、咥えたときの定位置を決めるのは少し難しいなとは思っています。

● サックスと同じ運指なのもエアロフォンの特徴ですが、操作性はいかがですか? 

● フラジオの指使いで、僕が普段吹いている指使いが使えないって思っていたのですが、エアロフォンは自分でフラジオの指使いをいくつかアサインできるんですよね。僕は最初に覚えてしまった変な運指でしか吹けないので、それがすべてアサインできるようになると嬉しいですね。

● 内蔵の音色で宮崎さんのお気に入りは?

● エアロフォンのバージョンがVer.2.00に上がって、シンセ音色が増えたじゃないですか。あの中に良い音がいっぱいありました。041番の“Saw Lead 2”はもう本当にすごく良いサウンドです。あとは“JP-8000 Brass(027番)”を聴くとローランドの音だなって思いますね。

● 生楽器系の音色はいかがですか?

● アルト、テナー、ソプラノ、バリトンの各サックス音色はすごく考えられていますね。これまでのウインド・シンセと比べてもリアリティがちゃんと出ていて、このサックスのシリーズは大好きです。今までこういうものの選択肢はなかったので嬉しいですね。実は僕らはウインド・シンセでライブをする現場が結構あるんです。例えば歌モノで1曲だけバリトン・サックスを演奏する場面が出てくる場合、その1曲だけのためにバリトン・サックスを持って移動ができないような現場があるんです。そういうときはウインド・シンセでやっちゃうんですけど、バリトン・サックスの音色は、“エディットできないし困ったな”みたいなことがこれまではありました。でも必要に迫られて使ってきたのですが、エアロフォンの音色なら問題なく現場で使えますね。

● サックスの方って楽器の持ち替えのお仕事も多いと思うので、そういうときにもエアロフォンは重宝できるんですね。

● そうなんです。歌モノのバックなどは、本当の生楽器じゃなくてもいいっていう現場が結構あって。その場合はウインド・シンセを使うってことがよくあります。

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エアロフォンがサックスの練習用に 使えるって間違いなく言える

● エアロフォンはVer.2.00になって音色が追加されましたが、さらにこういう音が欲しいという希望があればお聞かせください。

● サックスのバリエーションが増えると嬉しいですね。すごく極端なことを言うと、アルト・サックスだったらデイヴィッド・サンボーン、テナーだったらマイケル・ブレッカー・サウンドみたいな、ちょっと特化したものがひとつでも追加されると嬉しいですね。

●宮崎さんの音が入っているとか(笑)。

● まあまあ、例えばですけど、そういうのもすごく面白いなと思います。

● エアロフォンをサックスの練習用に買われてる方も多いようですが、練習用としては宮崎さんどう思われますか?

● 良いと思います。自宅でサックスを練習できない環境に住んでおられる方も多いと思うので。吹いた感じにちゃんと音色が追従する感じとか、そういうところにサックスとの共通点に見いだす人って大勢いると思うんですよ。そういう意味においてもエアロフォンがサックスの練習用として使えるっていうのは、間違いなく言えることじゃないでしょうか。

● 最後に、ウインド・シンセの魅力をお聞かせ頂けますか。

● ウインド・シンセっていうと生楽器に敵わないって思ってる人が多いと思うし、僕も最初はそうでした。でも始めてみるとウインド・シンセならではの魅力っていうのがあることも分かってもらえると思います。使う人がウインド・シンセってこういう使い方もできるというようなものを、どんどん考えていってもらって、ウインド・シンセの世界をもっと広げていって、盛り上げてほしいと思います。あとはリアルな楽器にも遜色ないぐらいの利用頻度でエアロフォンを含め、ウインド・シンセという楽器が使えるようになってほしいですね。スーパーナチュラル音源に関してその可能性をすごく感じています。例えばですけど、生ピアノと電子ピアノの棲み分けみたいなものは今ははっきりとできていて、ピアノがないライブ・ハウスだとみんな当然電子ピアノで演奏するわけですよね。おそらく今後そういうものにエアロフォンがなっていくんではなかろうかという可能性をすごく感じたりしています。

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Profile 宮崎隆睦 [みやざき・たかひろ]1969年生まれ 神戸市出身。バークリー音楽院に留学し帰国後1998年にT-SQUAREに加入。同バンドに2000年まで在籍。2006年ポニーキャニオン(Leafage jazz)より初のソロ・アルバム『ノスタルジア』を発売。2016年7月、サックス四重奏“CLOPS”でDVDをリリースし好評を博す。


Roland Aerophone

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オープン・プライス
実勢売価78,000円(税別)

【エアロフォンの主な仕様】
●キィ配列:サクソフォン互換キィ配列 ●音源:SuperNATURAL アコースティック、PCM シンセ ●プリセット・メモリー トーン:55( Ver2.10 ) ●ユーザー・メモリー トーン:100 ●エフェクト:マルチ・エフェクト、コーラス、リバーブ ●コントローラー:ブレス・センサー、バイト・センサー、演奏キィ、オクターブ・キィ、サム・コントローラー、トーン・ボタン、メニュー・ボタン ●ディスプレイ:カスタムLCD ●接続端子:INPUT 端子(ステレオ・ミニ・タイプ)、PHONES/OUTPUT 端子(ステレオ標準タイプ)、USB COMPUTER 端子(USB MIDI 対応)、DC IN 端子 ●内蔵スピーカー:2.8cm、1.5W×2 ●電源:AC アダプター(DC5.7V)、充電式ニッケル水素電池単3 形(別売)×6 ●消費電流:418mA ●連続使用時の電池の寿命(使用状態によって変動):充電式ニッケル水素電池:7時間 ※通常使用時 ※ マンガン乾電池、アルカリ乾電池は使用不可●外形寸法:128(幅)x 93(奥行)x 574(高さ)mm ●質量:855g(電池含む) ●主な付属品:取扱説明書、AC アダプター、マウスピース・キャップ、ネック・ストラップ、専用ケース ●別売品:交換用マウスピース
※エアロフォン・エディター アプリ(iOS/Android )対応

問い合わせ先:ローランドお客様相談センター
電話:050-3101-2555 
Web :https://www.roland.com/jp/products/aerophone_ae-10/

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