世界的サックス奏者であるケニーGの名を冠するサックス・メーカー。前号のアルト・サックスに引き続き今回はソプラノ・サックスをテストしました。
この楽器の最大の特徴と言うべきポイントは、最低音周辺のキィ・システムがセルマー・マークⅥと同様の仕様になっている点です。左手テーブル・キィの機構は現代の一般的な楽器とは異なり、Low B、Bbのキィがメイン・キィと同じライン状にレイアウトされるので音が前に飛びます。例えばマイクでキィ部分を狙うときにはとても便利です。操作も慣れてしまえば全く問題ありません。
マークⅥとは違ってストラップ・フックもフロント・キィも、さらにHigh Gキィまで付いているので新旧の良いとこどりというか、ある意味よく考えられた楽器だと感じました。
銅の含有量が多い管体から発せられる音は重厚で落ち着きがあり、キンキンしがちなソプラノ・サックスをダークでスマートに鳴らしてくれます。ネック一体型の利点であるナチュラルな吹奏感は言うことなし。しっかりとして表現力も持っています。
ゆったりとメローな演奏は柔らかく、速いパッセージは一つ一つの音をハッキリと発音し、フォルテシモも十分に受け止めてくれる懐の深さ。コレはイイかも! ソプラノお探しの方は是非お試しを!
マークⅥを踏襲した右手側のキィ
現代的なデザインの左手側キィに対し、右手側はマークVIと同様のデザインで、EbキィとCキィの形状はマークVIを踏襲している
High Gキィを装備
サイド・キィの内側にHigh F#キィ(下側)とHigh Gキィ(上側)を装備。標準最高音より半音高いHigh Gを容易に演奏することが可能
ケニーGのサイン彫刻
ケニーGのサインが刻まれた管体。さらにキィにも彫刻が施され、上位モデルならではの風格が漂う
(撮影:田坂圭)
430,000円(税別)
(問) ホスコ TEL 052-796-1588
■SPECIFICATIONS
●管体:銅85%ブロンズ・ブラス●キィ:ブラス●塗装:ダーク・ラッカー仕上げ●彫刻:あり(管体/キィ)●ネック:一体型(ストレート)●その他の仕様:ブラス製サム・フック&サム・レスト、オリジナル・デザインのハイF#、ハイG、サイドF#、フロントFキィ、リブ付き構造(キィ・ポスト一体型台座)●付属品:ケニーGマウスピース、リガチャー、ハード・ケース、キャップ、ストラップ、クロス、グリス
■試奏環境
●マウスピース:メイヤー5MM●リード:ダダリオ・グランドコンサート 3●リガチャー:セルマー旧タイプ
Wood Stone New Vintage Series WSA GP 試奏動画
試奏者 副田整歩
クラシックとジャズの素養を併せ持つサックス奏者。アルト・サックスをメインにサックス全種とフルート、クラリネット、ピアノなどを演奏するマルチ奏者としても活動。お経とジャズのユニットNam Jazz Experiment主宰。スタジオ・ワークのほか中塚武、コトリンゴ、YUKIのサポート・ミュージシャンとしても活動している。デリカテッセンレコーディングスよりシングル「Sign」「Mind Travel」配信中。作編曲家としても高い評価を得る。