やっと対面することができたアクソスのテナー。元来フラグシップのラインナップのみのセルマー・パリ社がフラグシップよりひとつ下の位置付けとしてリリースしたのがこのアクソスで、先行してアルトが発売されていましたが、待望のテナーが登場しました。
ネック・ソケットの軽量化や専用メタル・レゾネーターの採用などAXOSテナー用に独自の設計が施され、彫刻やラッカーについてもこの楽器専用のものが採用されているとのこと。
フラグシップ・モデルではありませんが、見れば見るほどしっかりと作られています。特に軽量化されたネック・ソケットは音の反応がダイレクトで、反応の速さを大事にするジャズ・ポピュラー系のプレイヤーが好む特性だと感じました。このままレコーディングやツアーの仕事に持って行ける、そんな気持ちにさせてくれます。
キィ・レイアウトは違和感なく手に馴染み、フィンガリングはとてもナチュラル。
楽器自体の重量と吹奏感は共にライトでビンテージ楽器的ですが、現代の楽器らしく低音からフラジオまで非常にコントロールが楽、そして音程も良く、自分が狙った音色変化にもしっかり追従してくれる点も好ましいです。
シリーズⅡやⅢ、リファレンスと比べると格下のイメージを持ってしまいますが、素晴らしい楽器だと思います。是非お試しください。
軽量ネック・ソケット
吹きやすさを重視しアクソス専用に開発された軽量ネック・ソケット。譜ばさみ(ライヤー)装着部は管体にはんだ付けされている
メタル製レゾネーター
新たに開発されたメタル製レゾネーターは、アクソス・テナーのためにサイズが再考された
手彫りの彫刻
彫刻はアクソス・テナー用に新規デザインを採用。仕上げもゴールド・ラッカーを本モデル用に開発。その温かな色味は往年の名器を彷彿させる
(撮影:土居政則)
583,000円(税込)
(問)野中貿易 www.nonaka.com/inquiry/
■SPECIFICATIONS
●材質:真鍮
●仕上げ:ゴールド・ラッカー
●彫刻:アクソス限定デザイン
●その他の仕様:メタル製レゾネーター付きレザー・パッド、樹脂製サム・フック、ライヤー装着部を管体にはんだ付け、アクソス限定“S”ネック・オクターブ・キィ
●付属品:専用ケース、マウスピース(S80 C*)、リガチャー、キャップ、など
■試奏環境
●マウスピース:オットー・リンク・メタル7
●リガチャー:オットー・リンク
●リード:ダダリオ・ラ・ボーズ・ミディアム
Selmer Paris Axos Tenor 試奏動画
試奏者 副田整歩
クラシックとジャズの素養を併せ持つサックス奏者。アルト・サックスをメインにサックス全種とフルート、クラリネット、ピアノなどを演奏するマルチ奏者としても活動。お経とジャズのユニットNam Jazz Experiment主宰。スタジオ・ワークのほか中塚武、コトリンゴ、YUKIのサポート・ミュージシャンとしても活動している。デリカテッセンレコーディングスよりシングル「Sign」「Mind Travel」配信中。作編曲家としても高い評価を得る。